複利にまつわるいろいろな計算をまとめました。電卓・エクセルでの計算方法や年金原価係数などの諸係数との関連についても記載しています。
目次
単純な複利計算の場合
1年後の利息: 10,000×5%=500円
1年後の残高: 元本10,000+利息500円=10,500円
これは、10,000×1.05と計算できますね。
2年目はこの10,500円に利息がつきます。
2年後の利息: 10,500×5%=525円
2年後の残高: 元本10,500+利息525=11,025円
これは、10,000×1.05^2と計算できます。
3年目も同様に2年後の残高に利息がついて、4年目は3年後の残高に利息がついて、と計算していくと、
1年後:10,000×1.05= 10,500
2年後:10,000×1.05^2 =11,025
3年後:10,000×1.05^3 = 11,576
4年後:10,000×1.05^4 = 12,155
5年後:10,000×1.05^5 = 12,763
となり、5年後の金額は12,763円になります。
電卓での計算方法
以下はCASIO電卓の場合の計算方法です。
1.05××=
と打つと1.05^2を計算してくれます。さらに=を3回打って
1.05××====
と打てば1.05^5の計算結果が表示されます。この結果に10,000を掛ければいいので、
1.05××====×10000=
と打てば10,000×1.05^5 = 12,763 が計算できます。
エクセルでの計算方法
セルに、
=10000*1.05^5
と入力することで計算できます。
一定金額の積み立て
1年後の残高:
10,000に利息5%が加算され10,000×1.05=10,500
2年後の残高:
①前期残高10,500に利息を加算:
10,500×1.05=11,025
②当期新たに積み立てた10,000に利息を加算:
10,000×1.05=10,500
あわせて①+②=11,025+10,500=21,525
これは、10,000×1.05^2+10,000×1.05 =10,000×(1.05^2+1.05)で計算できます。
3年後の残高:
同様に、10,000×(1.05^3+1.05^2+1.05)=33,101
4年後の残高:
10,000×(1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05)= 45,256
5年後の残高:
10,000×(1.05^5+1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05)=58,019
5年後の積立残高は58,019円になります。
(注)1年目の積立額に利息がかからない場合は、
10,000×(1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05+1)=55,256円
となります。
等比数列の和の公式を使って計算
ここからは数式が出てきますので、興味のない方は読み飛ばしてください。
さきほどの()の中身
1.05^5+1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05 =5.8019・・
を等比数列の和の公式を使って求めてみます。
等比数列の和の公式とは
1+α+α^2+α^3+・・・+α^(n-1) = (α^n - 1)/(α-1)
(ただしα≠1)
【証明は以下】
S=1+α+α^2+α^3+・・・+α^(n-1) ・・・①とおく。
両辺にαを掛けると
αS=α+α^2+α^3+・・・+α^(n-1)+α^n ・・・②
②から①を引くと
αS - S=α^n - 1
よって、S=(α^n - 1)/(α-1)
αを1.05とすれば、
1.05^5+1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05
=(1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05+1)×1.05
=(α^4+α^3+α^2+α+1)×α
=(α^5-1)/(α-1)×α ⇐和の公式より
=(1.05^5-1)/(1.05-1)*1.05
となります。上式を計算すると確かに5.8019となっています。
年金終価係数との関連
(1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05+1)のことを年金終価係数といい、
で求められます。
年利率=5%、年数=5とすれば、
年金終価係数=(1.05^5-1)/0.05
となります。
先ほどの等比数列の和の公式から導き出されるものと一致します。
電卓での計算方法
1.05^5+1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05 を求めるには、GT機能を使います。
GT機能とは、=を押して表示された計算結果の総和を計算してくれる機能です。GTボタンを押すことで総和が表示されます。
1.05=××====GT
と打ち込むと計算結果5.8019・・・が得られます。
(=や×を押すたびに表示がどう変化するか、よく観察してください)
この結果に10,000を掛ければ答えになります。
1.05=××====GT×10000=
エクセルでの計算方法
数式を直接入力してもいいですが、FV関数を使うとカンタンです。
FV関数:FV(利率、期間、費用)
FV(5%,5,10000)の値は、
-(1.05^4+1.05^3+1.05^2+1.05+1) ×10,000
となります。
マイナスの値となるので、関数の前にマイナスをつけて1.05を掛ければ求める答えが得られます。
=-FV(5%,5,10000)*1.05
とセルに入力すれば計算できます。
ローンの元利均等返済
5年ローンで10,000円を借り入れた。年利5%、支払日は毎期末、支払額は一定である。毎年の支払額はいくらか?
以下のように考えると比較的簡単です。
例えば毎年支払う金額が2,000円だとします。
1年目の支払額2,000円は元本の一部分に利息5%が1年分加算されたもの、2年目の支払額2,000円は同様に元本の一部分に利息5%が2年分加算されたもの、3年目以下同様・・と考えます。
1年目の支払額に対する元本:2,000÷1.05 = 1,905
2年目の支払額に対する元本:2,000÷1.05^2 = 1,814
3年目の支払額に対する元本:2,000÷1.05^3 = 1,728
4年目の支払額に対する元本:2,000÷1.05^4 = 1,645
5年目の支払額に対する元本:2,000÷1.05^5 = 1,567
合計 8,659
つまり、借入金額が8,659円なら毎年2,000円で5年間支払えば完済ということになります。
では、借入金額が10,000円ならどうなるか?
先程の合計は、
2,000×(1/1.05+1/1.05^2+1/1.05^3+1/1.05^4+1/1.05^5)
で計算できます。()の中は計算すると4.3294です。
2,000×4.3294=8,659 (小数点以下四捨五入)
この合計が10,000になればよいので、毎年の支払額は
10,000/4.3294=2,310 (小数点以下四捨五入)
答えは2,310円となります。
年金現価関数・資本回収係数との関連
積立のときと同じように
1/1.05+1/1.05^2+1/1.05^3+1/1.05^4+1/1.05^5
を等比数列の和の公式を使って求めてみます。
α=1.05とおくと、
1/1.05+1/1.05^2+1/1.05^3+1/1.05^4+1/1.05^5
=(1/α^4+1/α^3+1/α^2+1/α+1)×1/α
=(1/α^5 - 1)/(1/α-1)×1/α
=(1 - 1/α^5)/(α-1)
=(1-1/1.05^5)/(1.05-1)
=4.3294
なお、(1/1.05+1/1.05^2+1/1.05^3+1/1.05^4+1/1.05^5)のことを
年金現価係数といい、
で表します。
年利率=5%、年数=5とすれば、年金現価係数は、
年金現価係数=(1-1/1.05^5)/0.05 = 4.3294
となります。
等比数列の和の公式を使って求めた結果と同じになっていますね。
資本回収係数は、年金現価係数の逆数です。つまり、
毎年の支払額 = 借入金額/年金現価係数
= 借入金額 × 資本回収係数
となっています。
電卓での計算方法
問題は、
1/1.05+1/1.05^2+1/1.05^3+1/1.05^4+1/1.05^5
をいかにして求めるかということですが、以下のように打ち込むと計算できます。
1.05÷÷1=====GT
この計算結果4.3294・・・を10,000で割るにはさらに
÷÷10,000=
と打ち込めば、2309.747・・・が得られます。
(※)CASIO電卓では、A÷÷Bとすれば、B/Aが計算できます。
エクセルでの計算方法
PMT関数を使います。
PMT関数:PMT(利率、期間、費用)
セルに、
=-PMT(5%,5,10000)
と入力すれば、答え2,310が得られます。
10,000円を借りるなら毎年の支払額は2,310円になるということです。
PV関数はその逆関数みたいなものです。
PV関数:PV(利率、期間、費用)
-PV(5%,5,2310) の値は、10,001 となります。
つまり、毎年の支払額が2,310円ならば10,000円を借りられる、ということです。
上記の議論から、
年金現価係数(利率5%、年数5)は、-PV(5%,5,1)
資本回収係数(利率5%、年数5)は、-PMT(5%,5,1)
となることがわかります。
まとめ
複利計算についていろいろなケースをまとめました。
簿記会計の勉強だけでなく、積立などの資産形成・ローンなどの借入返済の際のシミュレーションに役立てていただければ幸いです。