簿記

【簿記で使う数学】一次関数とグラフ

投稿日:2021年10月31日

工業簿記ではシュラッター図などグラフを用いた問題が出題されますが、問題を解くには一次関数とそのグラフの知識が必要です。

中学で学ぶレベルの数学ではありますが、案外むずかしいもの。

シュラッター図や損益分析が苦手な方や、「一次関数?細かいところ忘れちゃった」「今さら人に聞けない」という方には、この記事がお役に立てると思います。

一次関数とグラフ

一次関数とはどういうものか、そのグラフの特徴について説明します。

一次関数とは

りんごを購入するときの個数と値段について考えてみます。

 

1個100円のりんごを10個買うときの値段は?

 100×10=1,000円ですね。

では、その2倍の20個買うときの値段は?

 100×20=2,000円です。

3倍の30個買うときの値段は?

 100×30=3,000円です。

 

このりんごを買うときの「個数と値段」のように、片方を倍にすればもう片方も同じように倍になる、片方を3倍にすればもう片方も3倍になる、というような関係を「比例」と言います。

 

では次のケースを考えてみましょう。

りんご(@100円)を購入する際に送料が500円かかる(個数がいくつでも)とした場合はどうなるでしょうか。

 10個買う場合は、100×10+500=1,500円

 20個買う場合は、100×20+500=2,500円

 30個買う場合は、100×30+500=3,500円

 

個数が倍になっても値段は倍になっていませんし、個数が3倍になっても値段は3倍になっていません。

これは比例ではありません。

 

しかし増分に注目してみます。

 個数が10個⇒20個のとき、

 個数の増分:10個、値段の増分:1,000円。

 個数が10個⇒30個のとき、

 個数の増分:20個、値段の増分:2,000円。

 

個数の増分が倍になったとき、値段の増分も倍になっています。個数の増分が3倍になったとき、値段の増分も3倍になっています。

この増分どうしが比例している関係を「一次関数」といいます。

 

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一次関数とは

一次関数とは、ある量XとYが以下の関係にあることをいいます。

 

 Y = a × X + b (a, bは定数)

 

先程の例では、りんごの個数をX、値段をYとすると(りんごの単価100円、送料500円)

 

 Y = 100 × X + 500

 

となっているので、個数と値段は一次関数の関係にある、といいます。

一次関数では、Xの増分とYの増分は「比例」の関係があります。

 

なお、送料がない場合は、

 Y=100 × X

となりますが、定義の式でb=0の場合の形になるので、これも一次関数です。比例は一次関数の特殊な場合(b=0)になります。

 

グラフの傾きと切片

一次関数をグラフで表してみましょう。

 

横軸(X軸)にりんごの個数、縦軸(Y軸)に値段をとって、グラフを書いてみます。

 個数が10の場合は値段は1,500 ⇒ (X,Y)=(10, 1500)

 個数が20の場合は値段は2,500 ⇒ (X,Y)=(20, 2500)

 個数が30の場合は値段は3,500 ⇒ (X,Y)=(30, 3500)

とグラフ上に点を打って点どおしを結ぶと、以下のようなグラフになります。

 

傾きとは

1次関数のグラフにおいて、

 (Yの増分)/(Xの増分)

のことを傾きといいます。

あるいは変化率とも言ったりします。

 

グラフのかたちと傾きには以下のような関係があります。

  • グラフが右肩上がりのとき:傾きはプラス(Xの増分がプラスのときYの増分もプラスになるから)
  • グラフが右肩下がりのとき:傾きはマイナス(Xの増分がプラスのときYの増分はマイナスになるから)
  • グラフが水平のとき:傾きはゼロ(Yの増分は常にゼロだから)

そして、次が大事な点ですが、

 

Y= a × X + b のグラフの傾きは  a 

 

になります。

 

先程のりんごの例を見てみます。

グラフは以下の2点を通っています。

 (X,Y)=(10, 1500)(→点Aとする)

 (X,Y)=(20, 2500)(→点Bとする)

点Aから点Bに変化したときに、

 Xの増分は、20 - 10 = 10

 Yの増分は、2500 - 1500 = 1000

となるので、

 傾き =(Yの増分)/(Xの増分)= 1000/10 = 100

となります。aと一致していますね。

 

これを一般的に示します(ちょっと難しいですが)。

切片とは

一次関数のグラフにおいて、グラフ(直線)がY軸と交わる点を切片といいます。

 

りんごの例でいうと切片は500になります。

 

一般的に、

Y= a × X + b のグラフの切片は b になります。

 

なぜなら、Y軸の上にある点の X は 0 なので、Yは、

 Y = a × 0 + b =b

となります。よって、切片は b となります。

 

以上が一次関数とグラフの主な特徴です。

 

工業簿記での使い方

一次関数やそのグラフの応用範囲は広いですが、ここでは工業簿記に出てくるシュラッター図と固変分析について、使い方を説明します。

 

シュラッター図

シュラッター図とは、操業度と費用の関係を図(グラフ)にしたものです。

 

費用は、固定費部分と変動費部分に分かれます。

そして変動費は、変動費率×操業度 になります。

 

したがって、

 費用=変動費率×操業度+固定費

の関係があります。

 

費用をY、操業度をX、変動費率をa、固定費をb、とすれば

 Y= a × X + b

の関係が成り立っています。

つまり、費用と操業度は一次関数の関係にあります。

 

これを理解していればシュラッター図は簡単です。

シュラッター図では、各種差異(予算差異、操業度差異、能率差異)を求めることが課題です。

そのためには、まず直線の傾き=変動費率と固定費率 を求めます。

 

傾きが分かれば、Yの増分(=費用の差異)は、Xの増分(=操業度の差)に傾きを掛けることで計算できるからです。

 

例えば、上の図で操業度差異を求めるならば、

 操業度差異=固定費率 ×(実際操業度 - 基準操業度)

で計算できます。

 

能率差異(変動費分)を求めるならば、

 能率差異=変動費率 ×(基準操業度 - 実際操業度)

というように計算できるわけです。

 

固変分解(高低点法)

例題: 高低点法により、変動費率と固定費を計算しなさい。

 

高低点法とは、原価を変動費と固定費に分ける方法のひとつです。

過去のデータのうち正常な範囲内にあるものの中から、操業度が一番高いときと一番低いときのデータ2点を選んで、変動費と固定費を計算します。

 

例題のケースでは、

 操業度が一番高い ⇒ 2月の製造原価33,250円、操業度310時間、

 操業度が一番低い ⇒ 4月の製造原価28,000円、操業度240時間

です。

製造原価と操業度との関係は、この2点を通る直線で決定される、と考えるわけです。

そしてこの直線の傾きが変動費率、切片が固定費になります。

 

それでは、このグラフの傾きを求めてみましょう。

以下の2点を通る直線の傾きa を求めます。

 (X1,  Y1)=(240,  28000)

 (X2,  Y2)=(310,  33250)

  a =(Yの増分)/(Xの増分)

   =(Y2 - Y1)/(X2 - X1)

   =(33250 - 28000)/(310 - 240)

   = 75

 

次に、切片b を求めます。

傾き a = 75 なので、この直線は Y=75 × X + b と表せます。

この直線は(X1,  Y1)=(310,  33250)の点を通るので、

 33250 = 75 × 310 + b

となっているはずです。よって、

 b = 33250 - 75 × 310

  = 10000

と求めることができます。

 

(X2,  Y2)=(240,  28000)の点を通ると考えても同じ結果になります。

 28000 = 75 × 240 + b

 b = 28000 - 75 × 240 = 10000

どちらの点で計算しても同じ結果になることがわかりました。

 

直線の傾きが 75、切片が 10000 と求まりました。

よって、変動費率は 75円/時間、固定費は 10,000円となります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

一次関数とそのグラフについてまとめてみました。

一次関数の特徴は、「傾き」と「切片」です。この特徴を理解すれば、

工業簿記における変動費率⇒傾き、固定費⇒切片 となることがわかると思います。

参考になれば幸いです(^^)

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