自閉症の著者が13歳のときに書いた、58のエッセイと短編小説から構成されるこの本。自閉症の方が自分のことを記した世界的にも稀有な本です。英語圏では"The Reason I Jump" という洋題で出版されており、その他に20か国以上で翻訳されています。また最近映画化もされましたね。
自閉症の方って、文字通り自分を閉ざした人で、時に奇妙な行動をとったり、時に超人的な能力(絵画や記憶能力など、いわゆるサヴァン)を発揮する、というイメージが自分にはありました。
が、この本を読んで、自閉症の人がどう感じているか、体や感覚が普通の人とどう違うか、がよくわかります。また、幸せとか認められたいとか他人への思いやりとか、わかりにくいけど芯は普通の人と変わらないのだと思いました。
はじめにの中の一節に、「この本を読んでくだされば、今よりきっと自閉症の人のことを、あなたの身近な友達のひとりだと思っていただけると思います」とあります。今まさにそう感じています。
この記事では特に気に入ったエッセイをいくつかご紹介します。
自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)
何が一番辛いですか?
一番辛いのは自分のせいで悲しんでいる人がいること
自分が辛いのは我慢できる
自分がいることで周りを不幸にしていることには僕たちは耐えられないのです
普通の人になりたいですか?
僕はこのままの自分を選ぶかも
障害のあるなしに関わらず人は努力しなきゃいけないし、努力の結果幸せになれることがわかったから
自分を好きになれるなら普通でも自閉症でもどちらでもいいのです
すぐに返事をしないのはなぜ?
みんなはすごいスピードで話します
頭で考えて言葉が口から出るまでが本の一瞬です
それが僕たちにはとても不思議なのです
僕たちは質問を次から次へと浴びせられ、僕たちはまるで言葉の洪水に溺れるように、ただおろおろするばかりなのです
手や足の動きがぎこちないのはなぜ?
手足がいつもどうなっているのかが僕にはよくわかりません
僕にとっては手も足もどこから付いているのかどうやったら自分の思い通りに動くのか、まるで人魚の足のように実感の無いものなのです
いつも同じことを尋ねるのはなぜ?
よくはわかりませんがみんなの記憶はたぶん線のように続いています
けれども僕の記憶は点の集まりでぼくはいつもその点を拾い集めながら記憶を辿っているのです
物を見るときどこから見る?
物はすべて美しさを持っています
僕たちはその美しさを自分のことのように喜ぶことができるのです
どこに行っても何をしても僕たちは一人ぼっちにはなりません
僕たちは一人に見えるかもしれませんが、いつもたくさんの仲間と過ごしているのです
まとめ
あとがきにはこう書かれています。
これって、、、あらゆる人が抱える問題ではないでしょうか。
巻末に掲載されている、自身も自閉症の子を持つ英語版翻訳者のデビッド・ミッチェル氏の『解説』が非常に興味深いです。また、映画化にあたってのインタビュー記事がこちらに掲載されていますので、興味ある方はぜひ読んでみてください。