この本を読むまでは、文章はきれいに書かなければいけないもの、文章は正確に書かなければ伝わらないもの、と思っていました。また著者のメンタリストDaiGoさんってテレビの印象が強く、申し訳ないけどちょっと胡散臭いなと思っていました(;^^)
本書では、文章は人を行動させるためにあり、そのためにあえて「書かない」とDaiGoさんは言います。なぜなら、人は文章を読んでイメージするが、細かく書きすぎることでイメージが膨らまなくなるから。イメージがなければ人は行動することはない。なのであえて書かないのだと。
逆に、人にイメージを膨らませ行動させるための7つのトリガーがあり、そのトリガーをうまく使うことが人を動かすための術なのだ、とDaiGoさんは言っていて、ブログをやっている者としては「なるほど!」と唸らざるを得ませんでした。またそれを自分で編み出し実践しているDaiGoって、実はすごい人だなと思いました(;^^)。
人を操る禁断の文章術
目次
【要約・引用】人を操る禁断の文章術
人を操るための書かない3原則とは
原則1「あれこれ書かない」
今から十数年前のアメリカのとある量販店で、売り場担当者が紙オムツ売り場に次の文章を掲示することで、紙オムツよりも高価な全く別の商品の売上げを大幅にアップさせました。
「今しか見れない姿、残しませんか?」
この売上が大幅アップした商品はなんだと思いますか?そう「使い捨てカメラ」です。
この本に書かれているすべてはこの事例が起点となっています。なぜたったこの一文で人が行動するのか? その理由を分析してどう使ったらよいか、をこの本はわかりやすく説明してくれます。
「今しか見れない姿、残しませんか?」というコピーを目にした買い物客は、そのときまさにわが子が展開している初めてのドラマの数々を思い出し、それをカメラで撮っている自分を想像します。
その結果、「オムツを買ってください」とも「カメラを買え」とも言っていない、まして商品の説明さえもされていない文章なのに、レジに向かうお客のカゴの中にはオムツと一緒に使い捨てカメラが入っています。
ここにはたった1行の言葉しか書かれていないのになぜこの文章が人の心を動かすのでしょうか?
人は受け取った情報が足りないときは想像や予測で判断する習性があります。
読み手は情報量の少ない文章に触れると、自分にとって強い感情を伴う出来事や好ましいことや望んでいることに想像力を働かせやすいのです。読み手の想像力を利用する。これがメンタリズム文章術の一番の特徴です。つまり読み手が都合のいいように想像できる、「隙」や「余白」を残している文章がいい文章だと言えるわけです。
文章は伝えたいことを述べ詳しい情報を与えて十分に説明されているからといって、読んだ人の心が動くものではありません。これが文章を書くことについての1つめの誤解です...(以下略)
⇒私もつい正確に伝えたい、情報量は多いほど良い、と考えてしまい仕事で作る資料など口で説明することはほぼすべて文章にしてしまっています(汗)
が、それで必ずしも経営者(上司)や顧客がよい評価をするとは限らないということですね。反省しなきゃです!
この原則1「あれこれ書かない」のほか、
- 原則2「きれいに書かない」
- 原則3「自分で書かない」
の2つが人を操るための原則として本書では紹介されています。
人を動かす7つのトリガー
メンタリストである著者DaiGoさんによる「感情を揺さぶり人を行動に駆り立てる7つのトリガー」のうち1つを紹介します。
トリガー1:人は損することを恐れる
「もし満足いただけなければ、全額返金いたします」
こんなキャンペーン広告を目にしたことはありませんか。多くの人が無料!という言葉に心が奪われるのはなぜか?それは
私たちは5000円の得よりも、5000円の損の方を重く感じる生き物だからです。
なので、損失が避けられるとわかると得した気持ちになる。その動きを利用しているのが無料キャンペーンです。
なかでも私(DaiGo)がすごい!と感じたのはアメリカのとあるデパートが展開している「5年返品無料サービス」。どんな商品でも買ってから5年以内なら返品できる。そう聞くと気軽に買われて次から次へと返品が舞い込んできそう、と思いますよね?
ところが返品可能期間を長くすればするほど返品率は下がるというデータがあります。なぜかというと、いつでも返せる安心感から商品を購入、いざ月日が経つと少々気に入らなくても「返品するのが面倒」という心理が働くから。
つまり5年間返品無料というサービスは、お客の心の動きを先回りして「買ってもリスクはありません。無料だから買いやすいですよね」と囁きかけているのです。
これはリスクリバーサルといって、買って損するのが怖い、という心理を「無料」や「返品保証」というコトバでかき消し購入に結び付けていく手法です。。。(以下略)
損を恐れる人の性質はプロスペクト理論とも言われ、例えば
- A. 100%当選する5万円の宝くじ
- B. 85%の確率で8万円が当たるが15%で何も得られない宝くじ
ではほとんどの人がAを選択し
- A. 100%6万円を失う宝くじ
- B. 85%の確率で10万円を失うが15%の確率で何も失わない宝くじ
ではほとんどの人がBを選択します。
計算すればわかりますが、
最初のケースでは期待値はBの方が高い(メリット大)
2つめのケースでは期待値はAの方が小さい(リスク小)
と数学的に得られる結果とは逆の選択を人はしてしまうわけです。ほんと、人って損を恐れる生き物ですね。この人の性質を理解すると、いろんな場面で応用できると思います。
また参考までですが、無料キャンペーンについては、現代広告の心理技術101(ドル―・エリック・ホイットマン著、ダイレクト出版)でもその有効性が強調されています。保証が長ければ長いほど信頼され売上が増える傾向にあるそうです。
現代広告の心理技術101―お客が買わずにいられなくなる心のカラクリとは
トリガー2:建前と本音のギャップに潜むエネルギー
「がんばるママの手が悲鳴を上げています」
「年中手荒れに悩むママに朗報です」
これは食洗機の広告コピーの例。メインターゲットはキッチンに立ち洗い物を一手に引き受けている女性たち、奥さん・ママたちです。
主婦なら洗い物をして当たり前。食事の用意をして当たり前。
そんな当たり前を、多くの主婦の方々はタテマエとして担っていかなければと思っています。本当は家事が苦手でもイヤでもタテマエのために頑張っているわけです。
食洗機の広告はそんな女性たちのタテマエを認め、手荒れという切り口で働きぶりに共感しながら、できれば洗い物の負担を軽くしたいというホンネに働きかけているのです。
そんな意図が!? 男性にはなかなかわからない戦略ですね。
家族のためだから頑張れるけど本当は学生時代のようなつるつるした手に戻りたい。肌荒れも何とかしたい、ゆっくり本を読む時間くらいつくりたい。食洗機のコピーの手荒れは入り口に過ぎず、突いているのは本当はこうありたいというホンネの気持ち。
このコピーを見た女性は、家族(夫)に対してホンネを明かさずとも、手荒れというタテマエを使って商品の購入を迫ることができる。だから、読み手である女性たちの心に刺さるのです。
人の心の中にある、「こうあるべき」というタテマエの部分と「こうありたい」と思っているホンネの部分とのギャップには、すさまじいエネルギーが潜んでいて、そこをカチッとハマるような内容を文章で示して行動させるのです。。。(以下略)
確かに、ブログでも建前と本音のギャップをうまく突いた内容がアクセス集めているし、ツイッターでもいいねを多く集める傾向があるような気がしますね。
また職場でも気難しい上司に言葉巧みにうまく接近し高評価を得ている方がいますが、そういう人たちは、時には建前、時には本音で絶妙に話をしています。ホンネ・タテマエを見分けるにはまず相手をよく観察することが重要ですね。
なんでもない言葉を名言に変える方法
例えば、
成功者は夢をあきらめない
は名言でしょうか、名言ではないでしょうか。
成功者は夢を持ち決してあきらめなかったから成功したという、納得するけど珍しくもなんともない話だし胸に響くわけでもないですよね。
ところがこう言い換えたらどうでしょうか。
◎成功者は飢え死にしそうなときでも夢をあきらめない (オリソン・マーデン)
ぐっと刺さる言葉になってきます。何がさきほどの文と違うか。
「飢え死にしそうな」という状況を想像させる言葉が入っているからです。
研究にお金を使いすぎて明日食べるものもないのにそれでも徹夜で実験を続ける・・・そんな具体的な情景が浮かぶからこそ、言葉が真に迫ってくる。そういうコトバの選択が名言を名言とさせているマジックなわけです。
そのほかにも、
- ×失敗してもあきらめるな
- ◎失敗してなんかいない。うまくいかない方法を700通り見つけただけだ(トーマス・エジソン)
- ×なぜかという疑問を持つことが大切だ
- ◎なぜかという問いは、その答えの100倍重要だ (アインシュタイン)
これら名言を分析して心をつかむフレーズの作り方をこの本では紹介しています。
あとは5つのテクニックに従って書くだけ
人を動かす7つのトリガーを押さえたら、5つのテクニックに従って書くだけ。
- テクニック1 書き出しはポジティブに
- テクニック2 なんども繰り返す
- テクニック3 話しかけるように書く
- テクニック4 上げて下げて、また上げる
- テクニック5 追伸をつける
このうちの1つを紹介します。
テクニック1 書き出しはポジティブに
(途中略) では実際にこのテクニック「書き出しはポジティブに」をどのように使っていけばいいのか。日常的なメールのやり取りを題材に紹介しましょう。プライベートな時間を共有した会社の先輩・上司、趣味でつながった取引先のキーマンなどへのメールの場合、冒頭にポジティブだった体験を盛り込んでいくと相手の心に刺さる文章になります。キーとなる言葉は「初めてです」「変わりました」「うれしい」「驚きでした」「もっとお話がしたかったです」などです。
- 文章例:「先日は海に連れて行っていただき、またジェットスキーにまで乗せて頂きありがとうございました。じつは生まれて初めてジェットスキーに乗ったんです。あんなに海が広いと感じたことは今までなかったので、人生観が変わりました。もっとお話ししたかったのですが、あまりに楽しくてあっという間に1日が終わってしまいました。
「生まれて初めて」は7つのトリガーのうち6つめの「認められたい」で解説したキラーフレーズを使っています。初頭効果でこちらの文章に好意を抱いてくれた相手にはちょっと大げさなくらいポジティブなほうが効果的。「はじめて」「変わりました」はベタですが、ストレートに「あなたが私に強い影響を与えた」と伝えてくれます。
これは相手の承認欲求を深く満たすこととなり「また誘ってみようかな」という次の行動を促すきっかけになります。
先日上司にゴルフに誘ってもらい翌日お礼のメールを出しましたが、ちょっと味気なかったなと、これを読んで反省。次回からは相手の承認要求のことを考えなければいけませんね(笑)
まとめ
いかがでしたか。
重要なのは完璧な文章ではない。
人に読んでもらい、心を動かし、行動させることだ。
文章は人を行動させるためにある― わかっているようでなかなか実践できないものですね。
私も仕事上いろんな資料を見ますが、最近のプレゼン資料って論文みたいに全て言いたいことが書いてあってそれを読むだけになりがち…というのは記事の中に書いた通り。まずは自分の作る資料から「あえて書かない」ことを実践してみたいと思います!
人を操る禁断の文章術