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【書籍】時間は存在しない/カルロ・ロヴェッリ

投稿日:2021年2月14日

1.ところ変われば時間もかわる

高い所の時間は早い、低い所の時間は遅い。これがアインシュタインの一般相対性理論から導かれる結果で実際に時間を測定してみると正しいことがわかる。この時間の流れの差が重力。時間の早いところから遅いところへ物は”落ちる”。時間は場所によって異なる。よって無数の時間がある。世界はひとつのリズムによって刻まれるのではなく、無数の時間による織物なのだ。

 

2.時間には方向がない

時間の一番の特長は「向きがある」ということ。原因があって結果がある、過去は変えられず未来は決まっていない。ところが物理の基本法則に過去と未来の区別はない。唯一あるのは熱の拡散は逆行しないというエントロピー増大の法則。だがこれも人間の認識能力が曖昧だから増大しているように見えるだけでミクロレベルでは増大していない。人間の認識の曖昧さが時間を生み出している。

 

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3.現在の終わり

光の速さで4年かかるプロキシマ・ケンタウリにいる姉に、今何をしているかと尋ねるのは意味がない。今とはなにか、現在とは?相対論によれば場所が違えば異なる時間が流れている。よって「同じ現在」というものはない。それぞれの場所には過去と未来をつなぐ光円錐があるのみ。重力により光円錐はいろいろな向きをむく。ブラックホールの近くでは横に傾いている。

 

4.時間と事物は切り離せない

アリストテレスは事物が変化しないところに時間は流れないと言った。一方、ニュートンは事物とは別に絶対的な時間と空間があると言った。どちらが正しい?アインシュタインは重力場を唱えた。場は事物がなくても存在するが、事物は場から生まれるものである。ただしアインシュタインも完璧ではなかった。量子力学があるからである。

 

5.時間の最小単位

量子力学は3つの基本的発見をもたらした。粒状性、不確定性、関係性である。時間も量子であり小さな粒からできていて、連続な値ではなくとびとびの値をとる。不確定性は電子でいうなら位置が正確に定まらないということ。関係性は観測しようとしたときに初めて具体的な位置が定まるということ。時間も、想像しにくいが同じ性質を持つと思われる。

 

6. この世界はモノではなく出来事でできている

この世界を物ではなく出来事、過程の集まりとして考えるとうまくいく。それが相対論と両立し得る唯一の道である。世界を調べれば調べるほど、そこに何か「在る」という視点ではこの世界を理解できない。物ではなく出来事のネットワークとして考える。物は変化がない出来事でしかない。

 

7.語法がうまくあっていない

現在は存在しない。現実の今とはなんなのか。相対論により、ある人の現在と他の人の現在は一致しない。過去、現在、未来は人間の知覚で現実を捉えたときの見え方であって、実際の世界の時間構造は異なる。客観的で普遍的な現在というものはない。

 

8.関係としての力学

世界を記述するには、ある出来事とある出来事に同期している変数を見つけて、それをうまく使えばよい。それを時間と呼ぶ必要はなく、それらの変数が互いにどう変化するのかを示す理論があればよい。時間が含まない量子重力の方程式はホイーラーとドヴィットが考えたが、ループ量子重力理論はその現代版。

 

9.時とは無知なり

マクロな状態の性質が時間を生み出す。マクロな状態によってある特定の変数が選ばれ時間が生まれる。つまり時間があるのは像がぼやけているからである。これを熱時間という。量子力学では相互作用の順番によって結果が異なる。この量子変数の非可換性が時間を生み出すと考えられる。

 

10.視点

なぜ過去の宇宙はエントロピーの低い状態にあったのか。それは私たちの視点からそう見えるだけ。無限で広大な宇宙はエントロピーが高い状態にある。その中には無数の部分系があり、私たちが認識できる=相互作用できる部分系Sは、たまたま初期が低エントロピーでエントロピーの増大が時間であるような系である。そこでは時間の流れ特有の現象が生まれ、生命が誕生し、進化が起こり、思考が生まれ、時間の経過を意識するようになる。

 

11.特殊性から生じるもの

世界を動かすのに必要なのはエネルギー源ではなく低エントロピー源である。低エントロピー源のエントロピーを増大させることで、植物や動物が育ち、モーターや都市をつくることができる。エントロピーの増大が過去と未来の差を生み出す。過去のエントロピーが低いから何かが止まり痕跡が残る。過去の痕跡が豊富だから「過去は定まっていて」、未来の痕跡がないから「未来は定まっていない」と感じる。

 

12.マドレーヌの香り

時間が存在しないなら人類とはなにか。私とはなにか?私たちは自分と似た人々と相互作用することで「人」という概念を形作っていて、「自分」とは仲間に当てはめるために自ら開発した人の認識回路を自分にあてはめているだけなのだ。そして記憶が「人生」を形作る。

 

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